多発性硬化症は中枢神経系の脱髄疾患の一つです。神経活動は神経細胞から出る細い電線のような神経の線を伝わる電気活動によって行われています。神経の線は髄鞘というもので被われています。この髄鞘が壊れて中の線がむき出しになる病気が脱髄疾患です。この脱髄が斑状にあちこちにでき(これを脱髄斑といいます)、病気が再発を繰り返すのが多発性硬化症です
多発性硬化症はわが国では比較的まれな疾患で、有病率は10万人あたり8~9人程度と推定され、約12,000人の患者がいると推定されています。発症には遺伝的要因や環境的要因関与が考えられています。
多発性硬化症になるはっきりした原因はまだ分かっていませんが、自己免疫説が有力です。私達の身体は細菌やウイルスなどの外敵から守られているのですが、その主役が白血球やリンパ球などですが、これらのリンパ球などが自分の脳や脊髄を攻撃するようになることがあり、それが多発性硬化症の原因ではないかと考えられています。このことにより、先ほど述べた髄鞘が傷害され(脱髄)、麻痺などの神経症状が出るのです。なぜ自分の脳や脊髄を攻撃するのかはまだ分かっていませんが、遺伝的な因子と、環境因子が影響していると考えられています。環境因子としてはEBウイルスなどの感染因子、緯度や日照時間、ビタミンD、喫煙などが知られています。発症は女性に多く、男女比は1:2~3位です。
多発性硬化症の症状はどこに病変ができるかによって千差万別です。視神経が障害されると視力が低下したり、視野が欠けたりします。この症状が出る前や出ている最中に目を動かすと目の奥に痛みを感じることがあります。脳幹部が障害されると目を動かす神経が麻痺してものが二重に見えたり( 複視 )、目が揺れたり(眼振)、顔の感覚や運動が麻痺したり、ものが飲み込みにくくなったり、しゃべりにくくなったりします。小脳が障害されるとまっすぐ歩けなくなり、ちょうどお酒に酔った様な歩き方になったり、手がふるえたりします。大脳の病変では手足の感覚障害や運動障害の他、 認知機能にも影響を与えることがあります。ただし、脊髄や視神経に比べると脳は大きいので、病変があっても何も症状を呈さないこともあります。脊髄が障害されると胸や腹の帯状のしびれ、ぴりぴりした痛み、手足のしびれや運動麻痺、尿失禁、排尿・排便障害などが起こります。
多発性硬化症を診断する上で最も重要な検査は、核磁気共鳴画像(MRI)検査で他にも髄液検査や誘発電位検査があります。
多発性硬化症の治療について
治療は急性期には副腎皮質ホルモン(ステロイド)を使います。ステロイドパルス療法で症状の改善がみられない場合、この治療を繰り返したり、血液浄化療法という治療を行ったりすることがあります。ステロイドの長期連用には、糖尿病や易感染性 ・胃十二指腸潰瘍や大腿骨頭壊死 などの副作用が出現する危険性が増すため、ステロイドパルス療法後に経口ステロイド薬を投与する場合でも(後療法と言います)、概ね2週間を超えないように投与計画がなされることが多くなっています。リハビリテーションを並行して行うこともあります。対症療法として有痛性強直性痙攣に対しカルバマゼピンを、手足の突っ張り(痙縮)に対してはバクロフェンなどの抗痙縮剤、排尿障害に対しては抗コリン薬など適切な薬剤を服用します。
宮古島 高輪アイランドクリニックでの検査と治療
多発性硬化症の根本的原因が腸内環境、口腔内環境に認められることがあり、分野横断的に全身の検査を行います。